2014年9月27日土曜日

『田淵安一展』鎌倉近代美術館

 2009年の11月、田淵安一がパリ郊外の自宅で亡くなった。享年88歳。昭和26年、30歳のころパリに渡り、以後フランスを中心にヨーロッパで活動した。元々東京大学で美術史を学び、大学院に進んだ後渡仏、パリではソルボンヌ大学に在籍した。ものごとを常に理論的に考える人だろう。当時のパリには岡本太郎、野見山暁治、菅井汲、佐野繁次郎、荻須高徳ら錚々たる人物がいた。この時代にパリに行くことは、よほど条件がそろってなければ叶わない。経済的な裏打ちと、決断力と、若さ。ということになるだろうか。しかし、けっこうな人々が渡仏している。
 久々の鎌倉近代美術館であった。個人的には、1955年「女の原型」(油彩)「火の大地」(水彩•クレヨン)1956年「水ー地』(水彩)1958年「沼に雨が降る」(油彩)が一番しっくりくる。田淵の作品は、時を経るにしたがってカラフルになる。ついには金箔すら使用するようになる。80年代後半「「黒い火山I」「黒い火山III」(油彩•金箔)1990年「インディアン•サマーIV」(油彩•金箔)の金箔の使い方は、日本画のそれだ。この作家は、何をどのように考え、どのようにして生きて来たのだろうか。
 


 鎌倉近代美術館は、来年春役割を終える。理由はこの土地は八幡宮の借地であり、その期限が来年切れ、更地にして戻さなければならないということだ。何度かここを訪れた。私個人にとっても思い出深い場所だ。これだけの歴史を刻んで来た美術館がいとも簡単になくなってしまうのは実に寂しい。保存運動が起きているらしいのだが、はたしてどうなるのだろうか。1951年、坂倉準三のモダニズム建築である。8月22日の暑い日、鎌倉ビールを飲みながら、そしていろいろ考えながら鎌倉の地を後にした