2014年5月19日月曜日

石田徹也 展

 2014•5•18
 平塚市美術館で開催されている『石田徹也 展』に行く。気温が高く、人々も風景も夏の装い。駅前でパスタと白ワインで昼食、そして美術館へ。石田徹也とは何者か。現代社会の風刺か、人間という存在の危うさか、押しつぶされそうな人間存在へのレクイエムか。テーマは明確だ。しかし、絵という表現は、微妙に多様性を孕む。極めて静寂な画面である。その静寂さは、現代人のある種の諦念を表しているようにも思える。作品の登場人物は、ほとんどネクタイ姿の社会人だ。高度資本主義のなかの会社員。
 私は、『深海魚』(2003)という作品が好きだ。窮屈なまでに真面目に追求する石田が、どこか突き抜けた心境に一瞬たどり着いたようにも思える。重層的な画面が妙に心地よい。晩年になればなるほど、外と内、内部と外部という概念が画面に表出してくる。『満潮』(2004)などの画面には渚と病院ベッドとカーテンが描かれる。これらの装置は、確実にあっちの世界、こっちの世界というイメージだ。本人が求めて描いているのだが、彼ほど自分の内面がむきだしになってくる作家もめずらしいかも知れない。作品がまるで予言者のように語りかけて来る。
 瞬間的にわたしは思った。「彼の死は無意識の自殺」だと。これを追求して行くと、戻れない地点まで踏み込まざるを得なくなる。多くの作家は、どこかで自分を引き戻す。しかし、極限で、あるいは極めてボーダーなところで、ぽっかりと開いた虚無の空間に入り込んで戻れなくなることがあるだろうと私は実感している。彼はそのようなタイプの人間だったに違いない。もし生存していたならば、抽象的な表現に興味を抱くようになったかも知れない。
 早朝の踏切事故で31年の人生を終えた。

 美術家彦坂尚嘉は、かれの作品に「第16次元崩壊領域」が見られるという。確かに彦坂特有の言説だが、そうだろうと思う。石田徹也はいい作家だ。

私事であるが
 「回転ドアの社会人」という題名のリトグラフを制作したことがある。22歳ぐらいのときだったと思う。回転ドアにへばりついたスーツ姿の現代人を描いたものだった。企業戦士の悲哀を、生意気にも感じていた。そんな私には、石田の作品がどこか懐かしいような感じもする。しかし、その後わたしは、この日本の高度経済成長の立役者である企業戦士を悲哀をもって語る事はしなかった。その人たちの忍耐と努力によって、戦後日本の復興があったのだと理解してからは。

2014年5月10日土曜日

Poissy(ポワシー)イル•ド•フランス地域圏

 個展開催期間の前半一週間、パリに滞在しました。そのとき、パリを少し離れたポワシーという町を訪れましたが、そこはパリの西30kmぐらいに位置する町です。私が滞在していたアパルトメントの近くの11区と12区にまたがる「Nation(ナシオン)」という駅で、RER A5番線の列車に乗り換えました。ナシオンからちょうど50分でポワシーにたどり着きます。自動車会社プジョーの工場がポワシー駅手前にあり、「あっ、ここがプジョーの工場なんだ」と少し感動。プジョーの208はここで作られているらしいです。閑静なポワシーの駅に降り立ちました。



 パリ市内とちがい、空気も澄んでいて人もちらほら程度。道にタバコの吸い殻も、犬のうんこも落ちていません。駅前の頭像は、ポンピドーです。後で画廊のオーナーから聞いたのですが、ポワシーにはブロジュアジーしか住んでいないらしい。おだやかに時間が流れています。こんなところに住んでいたら、心身共に健康でいられるような気がしました。
 駅を出たら、そのまま右の方にどんどん進みます。

 突き当たって、左をこちょこちょこと行くと、とんがり帽子が見えてきました。そうです、教会です。ノートルダム•参事会教会(Le Collégiale notre-Dame)という教会です。

   














 どこからお見えになったのか、ワンボックスカーを利用して来たシスターたちが数人いました。

 まだまだ歩きます。人家の軒先のようなところも進みます。





                                                                   

 すると見えてきます。目的の場所です。そうです、それはル•コルビュジエが設計したサヴォア邸です。















 
 
 森の中にドカンと見えて来る白亜の建物です。このモダニズムに最初は戸惑う感じです。しかし、中に入ると、この独創的なデザインに驚くばかりです。まるで迷路のような建築は、わたしたちの心身に何か別な次元の刺激を与えるような気もします。 






















 

 やはりすごい人です。1931年竣工。アンドレ•マルローが歴史遺産に指定した20世紀最高作品に数え上げられるひとつです。
 
 その後の帰り道、玩具博物館に立ち寄りました。なんだか、ドロリとしたオブジェたちが隙間なく存在しています。魔女の部屋のようなところもあり、興味深かったです。




 
駅から徒歩で行くのがおすすめです。ゆっくりと歩いてそんなに時間はかかりません。
パリ市サンラザール駅まで、なんと21分で着きます。もう一度行ってみたいところです。


ポワシーからサンラザールまで21分

































2014年5月6日火曜日

描画漫録(2014/4.19〜5.2 パリ)

 2回目になりますが、パリでの個展が終了しました。4月18日の夜に羽田から発ち、翌19日の朝4時にシャルルドゴール空港に着きました。まだ人々の姿は街には見られません。ひんやりとしたパリの早朝。橙色の街灯が照らす街角は、どこかウッディアレンの映画を思わせる感じでした。その日のうちに展示し、オープニングというハードな日程でした。パリでは初めての試みをするようにしています。今回は紙の作品でした。イタリアのファブリアーのという紙で、大量の水を使うので極厚のものを使いました。綿と違い、紙の場合にはよりスピーディーな作業が必要となります。あっという間に絵の具がしみ込んでしまうからです。その意味ではまだまだ探求が必要です。私としては、綿布の作品と意識的に違うわけではないのですが、紙の作品に注目してくれた人が少なくはないようでした。7月の銀座での個展で紙の作品をもう少し試みてみたいと思います。