原題:STILL LIFE 監督・脚本:ウベルト・パゾリーニ
2013年イギリス/イタリア
原題が「STILE LIFE」池澤夏樹の小説に「スティル・ライフ」という作品があった。第98回芥川賞受賞作品だ。この映画作品とは全然関係ないのだが、スティルライフという語を見て、思い出した。ローリングストーンズのアルバムにも同名のタイトルがあった。意味は「静物画」だという。どうしてこの題名なのだろうか。この作品を見ているとき、なんとなく小津安二郎監督(1903-1963)の作品に影響されているのだろうか、と感じたのだが、どうやら当たっていたらしい。固定カメラでの撮影は小津の方法を倣ったという。
ロンドン、ケニントン地区の民生係ジョン・メイ(エディ・マーサン)はアパートに一人暮らし、身寄りもないらしい。そのジョンの仕事は、彼と同じように身寄りのない人を静かに見送る仕事だった。感情の起伏を抑えた静かな画面が続く。死を前に、きわめて静かな空気が流れている。決まり切った日常を淡々と過ごすジョン・メイ。しかし彼の仕事は、寂しい。彼は決して人からの評価を気にしない。自分の心の流れにしたがって仕事をし、評価は関係ない。トースト一枚とツナとりんご一個が毎晩のご飯。その姿は殉教者のようでもある。彼は満足だったにちがいない。ラストシーン、静かな感動に満たされる。
(2014、2月14日 シネスイチ銀座にて)