おやすみなさいを言いたくて 原題:『A Thousand Times Good Night』
監督:エーリク・ポッペ 脚本:ハーラル・ローセンローヴ・エーグ
2013 ニルウェー/アイルランド/スウェーデン
「何千回ものグッドナイト」・・・・『Good Night]』という言葉には幸せの響きが感じられる。母親が「おやすみ」と声をかける、こどもは「おやすみなさい」と応える。それは幸福の原風景だ。しかし、この世界にはそのような風景を感じることができない鈍色の世界があることも確かだ。
アフガニスタン・カブール。埋葬がとりおこなわれているようだ。深い墓穴にひとりの女性が横たえられ、周りのひとびとは嘆きながらお祈りを捧げている。そのようすを写すシャッター音がひっきりなしに響く。女性報道カメラマンレベッカ(ジュリエット・ビノシュ)のカメラだ。ファインダーの中の女性は、どこか穏やかな表情に見える。戦闘の犠牲にでもなったのだろうか。そんな想像を働かせながら見ていると、女性の瞼が開く「えっ、これはソ!」・・・「なんのため?」・・まさか「悲劇の捏造」
しかし、この女性は墓に入ることができない運命をこれから担うというのが真実だった。不条理な真実だ。レベッカには夫と二人の子供がいた。突き上げる衝動を抑えることができないレベッカ。報道カメラマンとしての使命、それは「見捨てられた土地を世界に知らせる」ということ。自爆テロの巻き添えになり負傷するレベッカ。家族の苦しみは頂点に達する。我々が考えなければならない問題は山積している。
(12月15日「角川シネマ有楽町」にて)