オマールの壁
2013年 原題『OMAR』 パレスチナ 監督:ハニ・アブ=アサド
スクリーンに壁が映し出される。何枚もの板が突き刺さったような、なんとも異様な風景だ。街を切り裂くように無慈悲に立っている。これは、イスラエル政府によって建設された分離壁である。政府の説明では、「セキュリティ・フェンス」であり、パレスチナ人による自爆テロの防止のためであるとしている。しかしこの壁の存在によって、パレスチナ人の生活そのものが分離されてることは確かだ。
主人公オマール(アダム・バクリ)は一本のロープを使って8メートルほどもあるその壁を乗り越える。恋人ナディア(サーム・リューバニ)に会いに行くためだ。そして、オマールは、友人のタレク(エヤド・ホーラーニ)とアムジャド(サメール・ビシャラット)とともにイスラエル軍への襲撃を企てていた。
実行後、ナディアを含む四人の運命は大きな音を立ててきしみはじめる。歴史に翻弄されるイスラエルとパレスナの今の姿がそこにある。
アメリカ合衆国大統領選挙共和党候補ドナルド・トランプがメキシコとの国境に壁を造るといっていたが、その先行形態はすでにあったのだ。
日本語監修は重信メイ
(6月4日千葉劇場にて)