2016年10月7日金曜日

SCOOP!

               SCOOP!           2016年 日本 監督・脚本 大根仁

 1992年TBS系のドラマ「ホームワーク」に登場した汚れた感じの男。それが福山雅治だった。生活に荒れ、ヒモのようにヒロイン(清水美沙)につきまとうチンピラのような役柄だった。それ以降福山は、ミュージシャンとして、あっという間にメジャーになり、押しも押されぬアーティストとしての地位を確立して来た。この作品で、「昔の福山が戻ってきた」という印象を受けた。構成や細部へのこだわりも感じられる。「パパラッチ」という際物的な言葉も、もう忘れかけているが、実際にそのようなことを生業としている人もいる。探偵も広義にはそのようなものかもしれない。
 フリーカメラマンの都城静(福山雅治)は有名人のスキャンダルを追うパパラッチだ。きわどい手口を使っても売れる写真を撮る。社会の裏に通じるやさぐれた男だ。そんな彼の元に、写真週刊誌「SCOOP!」の新人記者行川野火(二階堂ふみ)が押し付けられる。副編集長の横川定子(吉田羊)が、送り込んだペーペーだ。かつて静と一緒に仕事をしていた定子の心理は容易に推測できる。この三者の関係性は、ベタといえばベタであるが、スリリングに進むストーリー展開としては欠かすことができない重要な基礎だろうと思う。
夜の繁華街・路地裏・怪しげなクラブ、お忍びは夜ときまっているので、ほとんどの場面は夜から深夜にかけてである。静の仲間であり、情報屋の「チャラ源」(リリーフランキー)がいい。最近バツグンにいい味を出している。そんなチャラ源に大きな借りを作っているらしいのだが、それは本作品では明らかにされない。謎の多いチャラ源だ。ヤク中であり、危ない匂いがする。ラスト、このチャラ源と静と野火の緊張感あふれる場面が圧巻だ。そして、ラストの一瞬が刺激的だ。
 作品のいろんなところに伏線が散りばめられている。静の乗っている車は中古のベンツの四駆。これがラストのクライマックスで、狂気のチャラ源の元に駆けつけて行くとき、装甲車のように見えてくる。そして静が憧れていたロバート・キャパの写真が、最後の決定的な瞬間と重なり合う。静たちが生きている業界が戦場であるのかもしれない、また世界の紛争地以外にも、この今の大都市そのものが戦場と化しているということなのかもしれない。滝藤賢一もいい。
                 2016・10・2「シネプレックス幕張」にて