2013年10月2日水曜日

世界一美しい本を作る男〜シュタイデルとの旅〜

 原題:How to make a Book with Steidl  監督:ゲレオン•ヴェツェル&ヨルグ•アドルフ
                                 2010年 ドイツ

 ドイツ•ゲッティンゲンにある出版社『Steidl』は、世界のアーティストから注目されている出版社だ。経営者ゲルハルト•シュタイデルは妥協を許さない。紙の質、手触り、ページを捲る音、紙の匂い。そべてにこだわり、デザインから印刷までこの『Steidl』で作り上げる。量より質を重要視する。大手出版社のような利益主義とは真っ向から対立する立場をとり続けている。しかし、この小さな出版社は潰れないのだ。なぜなら世界のアーティストや美術館から依頼が殺到し、向こう数年間はすべて出版予約で埋まっているからだ。
 シュッタイデルは世界を飛び回り、注文主と直接出版計画を詰める。電話などで打ち合わせして進めるよりも、はるかに確実に効率的に仕事が進められるからだと言う。写真家ロバート•アダムス、作家ギュンター•グラス、ファッションデザイナーのカール•ラガーフィールド、彼ら超一流の芸術家たちとの仕事、そして世界のどこにでも打ち合わせのために飛ぶ。本当は自分の仕事場で紙とインクの匂いの中に居たい、というシュタイデル。
技術屋である。思えば、アジアに位置する日本という国も、かつては技術屋の国ではなかっただろうかと思った。その国は、かつてドイツに学んだ。でも、いまは世界を席巻するUSAに全てを託している。西欧諸国も、アジア諸国も、その日本という国に対しては、そのような認識が確立している。まあ、しかたのないことではある。実際その通りなのであるから、言い訳はできない。