2013年10月26日土曜日

市街戦のジャズメン

 「もうひとつの朝」ー左藤泰志初期作品集ー 
               福間健二編(河出書房新社2011•5•20)所収

 1967年『市街戦の中のジャズメン』として発表、北海道新聞社主催「有島青少年文学賞」で優秀賞受賞。高校生の作品としては、掲載にふさわしくないと判断され、新聞には掲載されなかった。佐藤泰志18歳、函館西高校在学中の作品。後に『市街戦のジャズメン』と改題されて「北方文芸」に掲載された。
 いきなりホイットマンの詩が引用される。陰鬱な作風がなかなか興味深い。60年代から70年代には、このような学生がたくさんいたように思う。そして、そんな青年はみな哲学的な思考回路を持っていた。いい作品だ。なぜか懐かしさを感じてしまう。
 私も、若いころJAZZ喫茶に入り浸っていたころがあった。東北のある町の『BUD』という場所。重い扉を押開けると、タバコの煙と珈琲の香りが充満したその奥の席で、セブンスターとともに瞑想にふけっていた。ときどきはチェリーだったかもしれない。生まれて初めて行ったコンサートも「オスカーピーターソントリオ」だった。」文学とJAZZとタブローに自分の精神が血まみれになった時代だった。
 函館は北海道というより、私にとっては東北の一部のような感覚だった。言葉も津軽弁に極めて近い。冬の雲は重く、気持ちを押しつぶしてしまいそうな雪雲だった。

 地下のダンスホールでの一夜、「僕」のびりびりした感性は時代を超えて訴えかける。もういちど言うが、いい作品だ。

 注:P9L9「自分の地で染まった傷ついた顔〜」は「自分の血」の誤植であろう。