2011年11月13日日曜日

なで肩の美術史


 最近気になっていることに「なで肩」がある。国立西洋美術館で開催されている『プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影』(10月22日〜1月29日)の『初代フロリダブランカ伯爵ホセ•モニーノ•イ•レドンド』(1782-83頃 196×116.5cm 油彩•カンバス)を見てからである。見事な「なで肩」である。記憶をさかのぼってみると、なで肩の肖像画などがいくつか浮かんでくる。ざっと作品を調べてみた。
 Leonardo da Vinci レオナルド•ダ•ヴィンチ(1452-1519)『最後の晩餐』(1495-1498テンペラ)中央に座すキリストの肩。『モナリザ』(1503-1505 油彩•板 76.8×53cm)の肩。『白貂を抱く貴婦人』(1485-90 油彩•板40.3×54.8cm)の肩。
 Raffaello Sanzioラファエロ•サンツィオ(1483-1520)『ユニコーンを抱く女性』(1506油彩•カンバス65×51cm)の肩。
 El Grecoエル•グレコ(1541-1614)『聖ヒエロニムス』(1587-97 油彩•カンバス111×96cm)の肩。
 Fra Angellicoフラ•アンジェリコ(1395-1455)『サンマルコの祭壇画』(1438-1440 テンペラ220×227cm)の人々の肩、特に右にいる修道士たちの肩。
 Francisco de Goyaフランシスコ•デ•ゴヤ(1495-1498『レオカディア•ソリーリャ』(1812-14油彩•カンバス1812-14)の肩。『荒野の若き洗礼者ヨハネ』(1808-12油彩•カンバス112×81.5cm)の肩。

 画面を構成するうえで、三角形という構図が基準になる。いかり肩の場合は構図的にやや不安定になるので、モデルがいかり肩であっても「なで肩」に描いたのかもしれない。そうしているうちに「なで肩」が美の基準になったと考えられまいか。印象派以降は違ってくる。肖像画自体の意識が変わったのか、性格などその人らしさや作家の意識でデフォルメされ、構図的には背景やその他の要素でバランスをとるようになったのかもしれない。
自分勝手にいろいろ考えている。

 おっと忘れていました。エコールド•パリÉcole de Parisのアメデオ•クレメンテ•モディアーニ Amedeo Clemente Modigliani(1884~1920)です。「狂騒の時代」のパリです。究極のなで肩です。彼の場合は、美の基準としてではなく、自分自身の心がそのまま画面に投影していると見るべきでしょう。