2012年9月30日日曜日

最強のふたり



 『最強のふたり』2011/FRANCE  監督:脚本 エリック•トレダノ/オリビエ•ナカシュ
元気が出る作品。深い悲しみと寂しさが裏打ちとなればこそ、このような元気が現れるのだろう。人はみな何かしら悲しく悲痛な思いを抱えている。
 いきなりイタリアの高級スポーツカーマセラティの疾走場面からはじまる。じつは最後の場面でもあるのだが、この痛快さがこの作品の底に流れている。障害を持った大富豪フィリップ(フランソワ•クリュゼ)も介護人ドリス(オマール•シー)もチャーミングだ。スラム街で生きてきた黒人ドリス、重度の障害を持ったフィリップ。このふたりはけして自暴自棄になることなく、何かあるとすぐジョークを飛ばす。このジョークがいい。この世のほとんどはジョークを飛ばせばなんとかなる、とでも言わんばかりである。ユーモアとペーソス。男の友情。雪のパリから透けて見えるのは、心温まる哀愁のメロディーだ。

2012年9月22日土曜日

憂鬱な思想


 記録的な残暑もやわらぎ、少しばかりひんやりとした空気が心地よい。日常が極めて忙しくせわしなく時間が過ぎて行く。そんなときに時として心のエアポケットにカクンと落ちてしまうことがある。
 あいもかわらず、自分とは人間とはこの世界とはという堂々巡りの考えにとらわれてしまう。さまざまのことや、ものに縛られている自分を感じる。人間はなぜ人間になったのだろう。人間は人間になろうとしてここまで来た。しかしそれがいったいなんだろう。確かにすべてを意味論でとらえてはいけない。さまざまなことに意味を見いだし、その意味づけによって安心しようとする。しかし世界は規則正しい意味によって成立しているわけではない。人間存在もしかり。
 こんなときには旅に出たいものだ。巡礼の旅でもいい。できれば言葉が通じないところがいいかもしれない。

 ツレから言われた「君は悩むのが似合っている」

2012年9月19日水曜日

鍵泥棒のメソッド


 内田けんじ脚本監督の『鍵泥棒のメソッド』を観た。さすがだ。『運命じゃない(2005)』も作りがしっかりしていて、丁寧な作品だと思ったが、今回もその期待を裏切ることはなかった。堺雅人•香川照之のコンビがなかなかいい。その他荒川良々もいい味を出している。作品が小気味好く展開して行くのは、プロットがしっかりしているからなのだろう。貧乏な役者のたまごと、裏社会に生きる男が織りなす都会の喜劇。どこかノスタルジックな雰囲気もある少しおしゃれな作品だった。

2012年9月16日日曜日

イラン式料理本


 15日の土曜日、岩波ホールで『イラン式料理本』を観た。監督モハマド•シルワーニの作品は、ほとんど故国イランでは上映されないという。この作品も上映禁止となっている。いったいどんなところが禁止条項に触れるのだろうか、作品はじつにほのぼのとしているのに。
 一所懸命にご飯をつくっても、それが夫に理解されなかったりする監督の妹や、義母。食事の準備時間が何時間にもわたる。しかし、彼女たちはとてもたくましい。と思っていると、監督の奥さんは、もうどうでもいいという性格。考え方や行動が近代的である。もちろんこの作品に底流しているものは、女性差別であるが、この差別感は世界中が共有しているものだろう。とても明るく、キュートな作品なのだが、考えさせられるところは多い。
 それにしても、岩波ホールはいつも高齢者が多い。たしかに岩波というの、知的ブランドだった。とくに全共闘世代の前後にとっては。
 映画が終わって、地下のイタリアンで昼食。パスタと白ワイン。

2012年9月9日日曜日

邦画二本


 休日の日曜日、テアトル新宿に行く。『かぞくのくに』と『I'M  FLASH!』の二本を立て続けに見る。新宿サブナード地下街であらかじめ前売り券を買い求めて行く。
 『かぞくのくに』は「北朝鮮に移住した息子が、病気治療のため一時帰国する」という話。これは重いテーマだ。しかし、とても重要な作品である。おそらくそんなに観客動員は出来なかったのではないだろうか、朝の一回だけの上映である。私たちは、このことをもっときちんと知らなければならない。
 『I'M  FLASH!』はある宗教団体の話。若いカリスマ教祖がまきおこす精神的苦悩。藤原竜也が教祖役だが、なかなかいい。用心棒役に松田龍平、「竜と龍」というのは偶然ですかね。ラストシーンは洋上で龍平に竜也が撃たれるというシーンなのだが、ほんとうに撃たれたかどうかは、作品の上で明らかにされていない。
 映画が終わり、午後の2時半ぐらいだったので、少し散歩をした。青梅街道を歩いて淀橋から川沿いにすこし行く。途中に『新宿国都ビル』という古びた小さなビルがあった。都庁の近く、右翼の大物慎太郎閣下が喜びそうなネーミングである。なかなか川がきれいだった。新宿区と中野区の境に淀橋がある。中野区本町1丁目に通りかかったら、思わぬところに東京工芸大学があった。前身は、小西写真学校である。あの小西六写真工業である。カメラの小西六だ。「サクラカラー」というフィルムは愛用した人が多くいたはずだ。いまはコニカミノルタになり、カメラ業界から撤退。企業も大学も時代に翻弄される。アニメーション学科やマンガ学科やゲーム学科も作っている。なんだかねえ〜という感じがしてならない。この大学をぐるっと一回りして路地に入ると、『クラブ湯』なんていう銭湯に出会う。早風呂のおじさんが出てきた。と思ったら、おばさん連がそれぞれやってきて、「あれ、今日は遅いねえ〜」なんて話している。私もこの銭湯に入りたくなった。
 そんなこんなで、東中野までたどりつき、総武線各駅電車で帰宅の途についた。
 

2012年9月8日土曜日

満腹食堂


 朝、有楽町のガード下『満腹食堂』に行って399円のマグロ丼を食べようと思った。
久しぶりの『満腹食堂』だったが、なんと本日土曜日。残念ながら土曜日日曜日は格安朝定食はやっていないことに気づいた。おっさん曰く「あー今日は土曜日だから高くなっちゃうよ。」「あっそうだね、じゃあまた後で来るよ。」と言って、目的の角川シネマ有楽町に入る。角川シネマは階下のビックカメラのカードを見せると、1300円で見ることができる。でも今日はあらかじめオンラインで席を予約しておいたので、割引は無し。休日は混雑しているかもしれないと思ったからだ。
 映画作品は『ボブ•マーリー/ルーツ•オブ•レジェンド』だ。レゲエの神様、キングオブキング。この人もすごい人だなあと感心するばかり。映画が終わり、結局『満腹食堂』に行って、生ビールと刺身定食でお昼をとる。午後は少し画廊回りをした。それにしても2012年の九月、まだまだ残暑。やはり残暑はイヤザンショ。