体調が悪く、仕事を休んで一日中寝ていた。寝返りをうって横を向くと、四段の箪笥があり、表面が板目だ。ふたたび寝返りをうって天井を見ると、正目模様だ。たぶん天井のそれは、化粧紙を合板などに張り合わせたものにちがいない。ましてリビングなどの天井は、一面白いペンキの塗装だ。
子供の頃は、あちこちが板目だった。布団に入って、天井を見ると板目模様はさまざまに躍動している感じだ。そしてところどころに節目がある。その模様は、さまざまなものを連想させた。人の顔に似ていたり、川の流れのようだったり、不思議な動物のようだったり。そして突然その板がガタリと開いて、恐怖のミイラが覗き込んだらどうしよう。などとあらぬ空想に耽って眠れなくなってしまうことがよくあった。天井には無数の物語があった。そんなことを思いながらあちこちを見回してみると、最近の建築はなんだか味気ないものに思えてくる。
*『恐怖のミイラ』1961年に日本テレビ系列で放送されていたドラマ。えらい怖かった。足の関節が動かない状態で歩くのだが、よく真似をして遊んでいた。とくに、屋根裏からいきなりのぞく顔は怖かった。