描画漫録 1
また作品の準備をしなけれればならない。S4号のキャンバスを張り、下地の白を塗りはじめた。作品作りには、必ずこの作業がある。そして、意外とこの作業が大切だ。この段階でいいかげんなことをすると、やはり作品に大きく影響が出てくる。媒体の準備段階から気が抜けない。しかし、この作業が身体にとって心地よい。自分が完全に職人になって行くことが感じられるからだ。うまくいくのもうまくいかないのもすべて自分自身の責任だ。すべては自分の技術にかかわっている。刷毛の毛が残っていないだろうか、むらは出ていないだろうか。そんなことを気にしながら、塗って行く。私のキャンバスは表面がつるっとしていてはいけない。ある程度の凹凸が必要だ。その凹凸が水をせき止めてくれたりする。したがって、下地があらかじめ塗られている既製のものではうまくいかない。綿キャンバスに自分で丁寧に塗って行く。作品製作の段階に入ると、自分以外の何者かがやってくる。あるときは神で、あるときはデモーニッシュなものだったりする。