監督•脚本 フェルナンド•トルエバ 脚本 ジャン=クロード•カリエール
2012 スペイン
ある彫刻家クロス(ジャン•ロシュフォール)とは、マイヨールのことである。もちろんフィクションではあるが、マイヨールへのオマージュという作品には違いない。
老彫刻家のもとにメルセ(アイーダ•フォルチ)という若い娘がやってくる。彼女はある日クロスの妻レア(クラウディア•カルディナーレ)が街で見つけ、つれて来たのだった。その娘の身体は、彫刻家好みのものだとレアは直感したのだ。レアもかつてはクロスのモデルを務めていた。山小屋のアトリエでの創作がはじまる。彫刻家の言葉はきわめて示唆的である。箴言と言える。見る者はその言葉をじっくりと味わうことができる。ドイツ軍占領下でのフランス。とりあえず過激な戦闘が行われているようすは見えない。実にのんびりとした時間が流れるアトリエである。しかし、その後ろには戦争の匂いが立ちこめている。この彫刻家を慕っているヴェルナー(ゲッツ•オットー)というドイツ軍人がいる。彼はときどきクロスのアトリエを訪れ、伝記の出版を計画していた。彼はミュンヘン大学で美術史の教鞭をとっていたのだ。ある日彼は遠くの戦地に行くことになったことをクロスに告げるが、彼が去った後クロスはひとりつぶやく、「もう合えない気がする」と。
また、モデルのメルセもまたスペイン内戦で故郷を追われた身の上だった。ひと夏のアトリエ。彫刻家とモデル、クロスとメルセ。それは友情とも言える関係である。そして、レアがいい。レアはクラウディア•カルディナーレだ。
(ル•シネマにて)