7月12日〜9月6日の開催。日本の具象彫刻の代表的な作家である舟越保武の展覧会。亡くなって13年が経つ。もちろん舟越桂の父親である。でもみなさん、三男の舟越直木さんも美術家であることをお忘れなく。
「ダミアン神父」「原の城」「長崎26殉教者記念像」はやはり代表作らしく、館内の空気を特別な次元に持ち上げているように思えた。この三作品に共通するのは、「物語性」ということにある。深い物語の主人公たちである。特に私の好きな作品は1971年制作の「原の城」である。名もない領民の姿であろうか、放心したような表情、あるいは深い悲しみの表情であろうか。言葉にならない言葉を絞りだそうとしているかのような口元、そして目は埴輪のようにぽっかりと穴が空いているだけ。何かを見ているわけでもなく、虚ろなまなざしのような、なんとも言えない空虚な目である。目がないので何も見ることができないのであろうか、あるいは目がないために人が見ることができない道理を見ているのだろうか。さまざまに受けとることができる。粗末な鎧を着た猫背の男、立っているのがやっとのような、存在感の希薄な立像。しかし、その存在感のなさが、圧倒的存在感となって我々を襲う。