ジョアン・ジルベルトを探して
原題:Where are you, João GILBERTO?
監督:ジョルジュ・ガショ 2018 ドイツ・フランス・スイス
言語:ドイツ語・フランス語・ポルトガル語・英語
ジョアン・ジルベルトとは何者か、ボサノバと言えば誰もが聴いたことがある音楽だと思うが、その伝説的存在がジルベルトである。1931年ブラジルに生まれ、2019の7月、つい最近亡くなった歌手である。カルロス・ジョビンなどとともに、ボサノバの創設者と言われる。彼は2008年以降、他との交渉を絶った。自室で昼夜逆転の生活をしていたとも、食事は常にドアの前に置かれて処理されていたとも、さまざまに伝説が流れる。まるで引き籠りのような生活だ。なぜ彼は姿を消したのか、その真相は誰も知らない。
マーク・フィッシャーというドイツの作家・ジャーナリストがいた。40歳で自らの命を絶ったのだが、この男がジョアンを探していた。マークはブラジル中いや世界中ジョアンを探し続けた。もちろん、所在はわかるが、絶対に会うことを拒否し続けるジョアン。単純な発想でマークの精神を分析することはできないが、彼の文学や世界への対処の仕方は、実に内省的なものだったのではないだろうか、そう思えてならない。そのマークを中心軸にして、監督ジュルジュ・ガショはジョアンを探す旅を続ける。マークがたどった場所を忠実になぞりながら、ジョアンの謎を解き明かそうとしているのだが、じつはマークの存在そのものが浮き彫りにされてくる。