プライベート・ウォー
監督:マシュー・ハイネマン 2018 イギリス・アメリカ
監督は『カルテルランド』などの硬質な作品を発表しているマシュー・ハイネマン。世界の不条理に対して、彼のカメラは鋭い視点で切り込んでいる。日本用のフライヤーでひとつ気に入らないところがある。「挑む女は美しい」というキャッチコピーだ。この男目線の一言で作品を台無しにしてしまう。反省してほしいものだ。
われわれはこの作品をしっかりと受け止め、戦争や紛争の地域が確かにこの地上にあることを考えなければならない。ジャーナリスト、メリー・コルヴィンを知っているだろうか。恥ずかしながら私が初めて知ったのは『バハールの涙』という映像作品でその存在を知った。女性クルド人と戦場行動をともにする片目の女性ジャーナリストが、メリー・コルヴィンという人をモデルとしていたということだった。メリー・コルヴィンは、1956年生まれのアメリカ人。UPIのパリ支局長の後、イギリスのサンデー・タイムスに移籍し、海外記者として戦地を取材しつづける。スリランカ内戦で左目を失い、極度のPTSDに苦しむ。しかし彼女は戦場のありさまを取材し世界に発信するという自らの使命を優先する。彼女の最後の地はシリアだった。政府は反体制の砲撃で亡くなったと発表したが、カメラマンのポール・コンロイは政府軍のメディアセンターを狙った攻撃だったと証言。彼女はシリア政府の嘘を暴き、狙われていた。戦争に巻き込まれたのではなく、ターゲットにされていた。ものすごい人だ。このようなジャーナリストたちが存在するので、我々は世界の不条理を知ることができる。そして真実を追求することが、とりもなおさずこの世界を救う糸口になるに違いないと私は確信する。私の一歳下、そして56歳で命を落とした。感慨深いものがある。
メリー役にロザムンド・パイク。ポール役にジェイミー・ドーナン。