2013年2月17日日曜日

エル•グレコ


 金曜は夜まで美術館が開館している。その日は2月8日、寒い金曜日だった。リニューアルされてはじめての東京都美術館。スペインの巨匠エル•グレコ没後400年、大きな回顧展だ。40年以上も前のこと、東北の田舎町でこの巨匠の存在を知った。エル•グレコの作品をまとめて見ることが出来る。それも縦3メートルを超える大作『無原罪のお宿り』が展示されるのだ。寒い夜でも心はうきうきして出かけた。
 1541年ギリシャのクレタ島に生まれた。名はドメニコス•テオトコスプーロス。その後ローマに行き、35歳ほどでスペインに渡りエル•グリエゴ•デ•トレドとして知られることになった。エル•グリエゴ•デ•トレド(EL Griego de Toledo)スペイン語で「トレドのギリシャ人」という意味だ。そして、いまは「EL Greco   エル•グレコ」という名で知られる。しなった身体に上を向いた目、独特の人物像だ。はるか昔にエル•グレコの映画作品を見たような気がする。1966年にルチアーノ•サルチェという監督が作った作品だろうか、劇場では未公開でTVでは放映されたと記録にある。高校生のころだったろうかと思うので、TVでこの作品を見たのだろうか、キリストの頭より上に人々が描かれているという罪で宗教裁判にかけられるという場面があり、強い印象になっている。18世紀以前のヨーロッパの代表的な画家「オールド•マスター」に数え上げられる画家だ。
 グレコの作品では好きなものと、そうでもないものがある。今回の回顧展の作品では特に1600年頃の作品『フリアン•ロメロと守護聖人』(206.7×127.5)が好きだ。守護聖人がいい。個人的にエロスを感じてしまう。また同じころに描かれた『ある枢機卿の肖像』(57×46)の小品もいい。会場最後に『無原罪のお宿り』がある。この大作は、全体像が見たいからといって、後ろに引いて見てはいけない。あくまでも作品の間近で、それも下から見上げなければ真の意味が見えてこないように思う。腰を落として見ていたら、となりで見ていた人がしゃがんで見始めた。そうそれでいい。充分作品を堪能して出口に向かい、フッと振り返ったら、みんながしゃがみこんでいた。
 すこしばかりお酒をのみ、遅い夕飯を食べて帰途についた。